活用事例

医学博士 藤岡 友之 様
深層学習ソフトウェア「Deep Analyzer」を導入したワークステーション「Deep Station」により、乳がんの画像診断モデルをプログラミングなし、マウスオペレーションだけで実現
ディープラーニングを活用して、従来とは一線を画す研究が進められているのが医療分野。なかでも、東京医科歯科大学放射線科の藤岡友之先生は、乳がんの画像診断にディープラーニングを導入し、目覚ましい成果を上げている先駆者のひとり。藤岡先生に、「Deep Station」を導入したきっかけと、実際の研究における「Deep Station」の使い勝手や成果、今後の研究活動の展望まで、幅広くお話をうかがった。
お客様プロフィール
医学博士 藤岡 友之
国立大学法人 東京医科歯科大学 放射線診断科
筑波大学 2008年03月 卒業
東京医科歯科大学 博士課程 2014年09月 修了
画像診断・乳腺・AI

専門性の高い乳がんの画像解析をプログラミングなしのディープラーニングで実現

─藤岡先生が勤務している「放射線科」についてお聞かせください。

藤岡友之(以下、藤岡) 大別すると、放射線治療診療を行う「治療科」と、私が所属する「診断科」の2科で構成されています。診断科では臨床各科と連携しながら、悪性腫瘍などの画像診断を始め、放射線を使った血管内治療(IVR)、CT画像を頼りに組織を採取するCTガイド下生検など、多彩な最先端医療を提供しています。私は「乳がんの診療」を担当しており、乳がんの画像診断を専門としています。

─研究者を志すようになったきっかけを教えてください。

藤岡 大学院で卒業論文に取り組んでいる際に、研究の面白さを改めて実感できたという点が大きいですね。卒業後、タイミングよく本大学のスタッフとして採用され、研究活動を継続できたことも幸いでした。

医学博士 藤岡友之。筑波大学卒業後、東京医科歯科大学博士課程を修了。以後、同大学で研究にたずさわるほか、附属病院の放射線診断科で診療も行う。
深層学習ソフトウェア「Deep Analyzer」を使って、約1000枚の乳房超音波画像を元に生成された画像。膨大なデータを手軽に扱えるのが最大の魅力だ。

─大学ではどのような研究をされているのでしょうか?

藤岡 最近は、とりわけ乳がん画像のディープラーニングに力を入れています。私がディープラーニングに興味を持つようになったのは2016年頃からですが、その時期は放射線科の画像診断の領域で「ディープラーニング」がちょうどムーブメントになり始めていました。関連した研究活動も盛り上がりを見せつつありましたし、私としても研究者として当然そうした流れには乗るべきだと判断し、2018年頃からUEIさんのワークステーションで本格的な研究をスタートさせました。

─UEIのワークステーションを使った感想をお聞かせください。

藤岡 少し話が逸れますが、そもそもUEIさんのワークステーションを導入することになったのは、当時の上司(現:獨協医科大学放射線部教授、久保田一徳先生)がUEIの社長を務める清水さんの講演に参加し、話のなかでUEIのワークステーションと深層学習環境を使えば、本格的なディープラーニングも簡単にできることを知ったのがきっかけなんです。従って、とっつきやすさは折り紙付きといいますか、当初はAIの知識があまりなかったような私でも、使いながら勉強する程度で操作方法を苦もなくマスターできました。現在、ソフトはギリアさんの深層学習環境「Deep Analyzer」を使用していますが、高度なプログラミング作業なしでディープラーニングを活用した本格的な画像解析が行えるので、本当に助かっています。

深層学習環境つきのワークステーションが市販パソコン並みの価格帯から手に入るとは驚きました(笑)

─画像解析というお話が出ましたが、具体的にはどのような分野で活用されているのでしょうか?

藤岡 最初に始めたのは「乳腺腫瘤」の画像診断モデルの作成です。というのも従来は、乳がんの検診などで腫瘤を認めた際、悪性・良性の判断は医師が見極めるほかなく、こうした診断をAIでなんとか置き換えられないものかと考えたからです。具体的には、良性480枚・悪性467枚の乳腺腫瘤の超音波画像で学習を行った診断モデルに、テスト画像120例を読影させたところ、診断精度については「感度」がAIの95.8%に対し、放射線科医は58.3〜91.7%、「特異度」はAIの87.5%に対し、放射線科医は60.4〜77.1%となりました。やや専門的な話になりますが、ざっくりといえば感度や特異度はいずれも診断精度を示す値ですから、高ければ高いほど診断能力に優れるということになります。つまり、このテストでAIが放射線科医以上の高い診断性能があることが証明されたわけです。以前なら学習モデルの作成はAIの専門家しか手が出せない高度な領域だったと思いますが、Deep Analyzerならある程度の画像枚数さえ調達できれば、いとも簡単に実現できてしまうというのはまさに衝撃でしたね。

人工知能やプログラミングの専門的な知識がなくても、簡単に深層学習モデルの開発が可能な「Deep Analyzer」。すべての「Deep Station」に標準搭載されています。
AIの構造やプログラミングの知識なしでも、マウスだけで簡単にディープラーニングを利用できるのが魅力と語る藤岡先生。学術論文の執筆にも大きく貢献している。

─Deep Analyzerの使い勝手はいかがですか?

藤岡 やはりマウス操作だけでディープラーニングの開発から訓練、検証まで行える点に尽きますね。非常に敷居が低いため、AIの構造やプログラミング技術など、特別な知識を習得しなくて済みますから、放射線科医としての本来業務を妨げることもありません。さらに、以前に使用していた「CSLAIER」は「画像分類」しかできませんでしたが、「Deep Analyzer」は最新ソフトだけあって、「物体検出」や「画像生成」もできるようになった点も極めて重宝しています。例えば、物体検出が可能になったことで、良性・悪性の診断だけではなく、実際にどの部位に病変があるか示してくれるようになりました。一方、画像生成を使えば、複数の画像から特徴を学習して新しい画像を作成できるため、本物そっくりの医療画像を手間なく大量に用意できます。しかも、作成した画像はディープラーニングのデータセットとしても利用可能ですし、実在しない画像のため、患者さんのプライバシーにも十分配慮できると考えています。

─製品についてなにか要望はありますか?

藤岡 これは医療特有の事情になりますが、CTやMRI、超音波などの医療機器では、通常、「DICOM(ダイコム)」という特殊なフォーマットで画像データが保存されています。このDICOMデータは、Deep Analyzerでは直接読み込めないため、いったんJPEG画像などに変換しなくてはいけないのですが、パッチを組んで自動化したとしても枚数が多いと非常に手間が掛かります。できれば、こうした特殊な形式にも対応してほしいですね。また、これはAI開発のハードルをできる限り下げるためだと思いますが、オーグメンテーションやハイパーパラメータ調整などが自動化され、手動でのカスタマイズができない点も少し気になります。というのも、研究論文では再現性を担保するため、設定やパラメータなどを詳細に明示することが望まれるからです。今後、アップデートなどでこうした点も対応してくれるとうれしいですね。

画像認識や生成、物体検出など代表的な深層学習モデルの開発が行えます。すべての操作は、Webブラウザ上でマウスによって行うことができます。

─ワークステーションのスペックには満足されていますか?

藤岡 申し分ないですね。私はDeep Stationではエントリークラス相当の「Entry S」というモデルを使っていますが、1000枚程度の画像分類なら500〜1000回の反復学習を行っても大体半日程度で済みます。当然、扱う学習データが増えればより高いスペックが求められるでしょうが、いまのところ、私の研究では十分事足りています。本格的な深層学習ソフト付きのワークステーションが、一般的なパソコンとさほど変わらないリーズナブルな価格帯から入手できるというのは本当に素晴らしいと思います。実をいいますと以前、他社さんに軽く見積もりを聞いたこともあるのですが、UEIさんと同じハード&ソフト環境を実現しようとすると、10倍も価格が違ってくるんですよ(笑)。

─サポート体制はいかがでしたか?

藤岡 これまでお話したようにソフトはもちろん、ハードの使い勝手も非常にいいですから、困ったことはあまりないのですが、まれに操作などでわからないことをメールで尋ねたりすると、レスポンスよく答えていただけるので非常に助かっています。

─研究活動について今後の展望を教えてください。

藤岡 医療分野においては法整備や倫理の問題など、テクノロジーだけでは解決し難い問題があります。ただし、研究活動はさかんに行われていますし、いずれは医療にもAIがゆっくり浸透していくのではないでしょうか。もちろん、患者さんによっては、AIに機械的に診断を告げられるのを好まないということもあるでしょうから、そうした感情面にも配慮できるような仕組みも同時に整えていくことが必要でしょう。